相続財産にかかる二重課税とは?所得税の非課税規定と判例をわかりやすく解説
こんにちは!大田区クラウド経理代行オフィスです!
相続で取得した財産について、相続税を払ったにもかかわらず、後に所得税まで課税されてしまうと、「え?同じ財産にまた税金がかかるの?」と疑問に思う方も多いかと思います。
この記事を読んでいる方の中には、「これって二重課税ではないのか?」と不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。
今回は、相続税と所得税が同じ財産に対して二重に課される可能性と、その場合に適用される『所得税の非課税規定』について、実際の判例や制度の背景を交えながら詳しく解説していきます。
この記事を読むことで、二重課税の判断基準、代表的な判例、そして具体的なケーススタディを理解することができます。
この記事は、相続で財産を受け取った方、税金について不安を感じている方、また相続・贈与に関わる士業の方や税務担当者の方に向けて書いています。
相続財産に所得税が課されることがある
相続で取得した財産には基本的に相続税が課されますが、その後に同じ財産に対して所得税が課されるケースもあります。
これが事実であれば、まさに二重課税です。国の税制では、本来このような重複した課税は避けるべきものであるため、「所得税の非課税規定」という制度が設けられています。
長崎年金訴訟が示した二重課税の実例
二重課税の存在を公に認めさせた判例として有名なのが、平成22年の長崎年金訴訟です。
この事件では、被相続人が契約していた定期金給付型の保険契約に基づき、相続人が将来受け取る保険金の現在価値に対して相続税が課されました。
その後、実際に保険金が支払われた際、その元本部分に対して所得税も課されるという事態が起きました。
最高裁はこのケースを「同一財産への二重課税」と判断し、所得税の非課税規定を適用するべきだと認定しました。
所得税の課税対象は「包括的所得概念」
そもそも、なぜ所得税が課されるのかというと、「包括的所得概念」という理論に基づいています。
この考え方は、個人の経済的利得すべてが所得と見なされるというもので、たとえ一時的・偶発的・恩恵的な利益であっても、原則として課税の対象となります。
たとえば、債務の免除を受けて得た利益、現物給付、為替差益なども課税対象です。
中には不正な手段によって得た利得も含まれますが、それらも納税者が「管理・支配」していると見なされれば、課税の対象になります。
所得税の非課税規定とは?その考え方と例外
所得税法には、相続税や贈与税がすでに課された財産に、改めて所得税を課すことを避けるための非課税規定が存在します。
この非課税規定は、同一の経済的価値に対して二重に税が課されないようにするためのものです。相続税や贈与税が課される場面では、基本的に所得税は免除されます。
ただし、財産の譲渡など、性質が異なる行為により新たに所得が発生した場合には、所得税が課されることもあります。
譲渡所得や債務免除益はどうなる?
たとえば、相続で取得した土地を譲渡した場合はどうでしょうか?
このケースでは、被相続人が土地を所有していた期間に発生した含み益(キャピタルゲイン)が、譲渡によって「実現」されたとして、譲渡所得税が課されます。しかし、これは「新たに発生した利益」への課税であり、相続税と同じ価値に課されるわけではないため、二重課税とはされません。
一方で、被相続人の借入金を相続した相続人が、一定の条件を満たしたことで債務免除を受けた場合には注意が必要です。
ある裁判では、一審が「相続後に債務免除されたため、二重課税ではない」と判断しました。しかし、控訴審では、「経済的利益は相続開始時点で実質的に発生していた」として、所得税の非課税規定の適用を認めました。
このように、課税のタイミングや、利得がいつ発生したかという視点が重要になります。
まとめ
- 相続税と所得税は、同じ経済的価値に課されると二重課税となる。
- 所得税の課税根拠は「包括的所得概念」による。
- 所得税の非課税規定は、二重課税を防ぐために設けられている。
- 譲渡所得のようなケースでは二重課税と見なされない。
- 債務免除益については、タイミング次第で非課税規定が適用される可能性がある。
税金の仕組みは複雑ですが、知識を持っておくことで、損を避けることができます。
気になる方は是非、お気軽にご連絡ください。


