多国籍企業に影響大!「長期未払法人税等」の正体とグローバル・ミニマム課税の仕組みを解説
こんにちは!大田区クラウド経理代行オフィスです!
「長期未払法人税等」という見慣れない勘定科目を有価証券報告書で見かけて、不安や疑問を感じた方も多いのではないでしょうか。
これまで会計処理の中で見なかったこの項目は、企業にとって一体どのような意味を持つのでしょうか。
今回の記事では、「長期未払法人税等」の中身や、その背景にある「グローバル・ミニマム課税制度」について、分かりやすく具体的な数字や事例を交えて解説していきます。
この記事を読むことで、
- 「長期未払法人税等」が何を意味するか
- どのような企業に影響があるのか
- 新しく導入された課税ルールの詳細
などが理解できます。
この記事は、上場企業の経理担当者や税務に携わる方、またグローバル展開を視野に入れている中小企業の経営者や経理担当者の方に、特に読んでいただきたい内容です。
長期未払法人税等とは何か?
「長期未払法人税等」とは、決算時点で将来的に支払いが見込まれる法人税などを、長期負債として計上した勘定科目です。
令和7年3月期のいすゞ自動車の有価証券報告書には、貸借対照表の固定負債として237百万円、損益計算書上でも「国際最低課税額に対する法人税等」として同額が記載されています。
この背景には、「グローバル・ミニマム課税制度」があります。
これは多国籍企業にとって、大きな影響を与える新たな税制ルールです。
グローバル・ミニマム課税制度とは?
この制度はOECDによる国際合意に基づき、年間総収入が7.5億ユーロ(約1,200億円)以上の多国籍企業を対象としています。
各国で15%以上の最低税率を確保することを目的とした仕組みです。
日本では、以下の3つのルールが導入されます。
- 所得合算ルール(IIR)
- 軽課税所得ルール(UTPR)
- 国内ミニマム課税(QDMTT)
令和6年4月以降、「所得合算ルール」が最初に適用されます。
所得合算ルール(IIR)の具体的内容とは?
所得合算ルールは、海外子会社の税負担が15%に満たない場合に、日本の親会社がその不足分を追加で課税される制度です。
例えば、タイの子会社は10%の税率で運営されていました。
そのため、差分の5%について、日本側で法人税を追加で支払う必要があると判明しました。
この制度で使用される主な計算項目は以下の通りです。
- 課税標準:(国別グループ純所得 − 所得除外額)×(15% − 国別実効税率)
- 法人税率: 90.7%(法人税と地方法人税の合算で実質100%)
- 申告期限: 会計年度終了の翌日から1年3ヶ月以内(初年度のみ1年6ヶ月以内)
海外税率との差分に応じた日本での課税が発生するため、グローバルな子会社展開をしている企業にとっては、これまでの税務戦略を再考する必要があります。
今後の経理・税務担当者が気をつけるべきポイント
新制度の導入により、海外子会社を持つ企業では以下のような対応が求められます。
- 対象となる海外子会社の実効税率を事前に確認する
- 適用除外の有無をチェックし、影響額を早めに試算する
- 申告期限に間に合うようにスケジュールを逆算し、体制を整備する
- 税理士や会計事務所との連携を密にし、最新情報をもとに対応する
早期に影響額を把握することで、経営判断にも役立てられます。
まとめ
「長期未払法人税等」は、グローバル・ミニマム課税制度の導入によって新たに登場した勘定科目です。
この制度は、多国籍企業にとって税負担の透明性と公平性を高める一方で、これまで活用していた国際的な節税スキームに大きな制限をもたらします。
経理・税務部門にとっては、会計処理と税務申告の複雑さが増すため、早めの情報収集と準備が重要です。
気になる方は是非、お気軽にご連絡ください。
参考
国税庁HP グローバル・ミニマム課税関係
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/global-minimum/index.htm